岩本さんの広報誌入門

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CSR報告書作成の傾向と対策/その2

更新日:2010年2月 2日

前回は、CSRレポートが3つのトレンドで様変わりしていることを解説しました。おさらいすると次の3つです。

①環境中心の報告書から環境・社会・経済を対象とする報告書へ

②ガイドラインに沿った報告書から企業ごとの独自性の高い報告書へ

③環境や社会的貢献活動の報告書からより本業に根ざした報告書へ

 

そして、この3つのトレンドを集約する形で、かつては環境関連部署あるいは広報部署の発行物のひとつだったものが、企業全体をアピールする新しいスタイルの会社案内へと進化しつつあると申し上げました。

では、新しいスタイルとはどのようなものでしょうか。

最近の先駆的なCSRレポートを3つのタイプにわけて、具体例をひとつずつあげることにしましょう。3つのスタイルを、①CSR会社案内、②戦略的CSRレポート、③CSRマニフェスト、と名付けることにします。私が勝手につくった分類ですので、オフィシャルなものではありませんが、現在の傾向を見るうえでは、ひとつの目安になるかとは思います。

 

CSR会社案内(具体例:パナソニック電工、http://panasonic-denko.co.jp/corp/csr

ズバリ、CSRレポートと会社案内を合体させたものです。同社では、2009年版からタイトルそのものを「CSR・会社案内」としています。もっとも、詳細なCSRレポートと本格的な会社案内を単純に合体させれば、たいへんなボリュームになってしまいます。そのため、同社のCSR会社案内ではそれぞれの要旨を合体させ、総ページ数28ページにまとめています。

導入部分(6ページ)は本業をCSRの視点で意義づける内容です。つまり、同社の事業コンセプトが、暮らしにおける快適性とエコの両立にあると定義づけています。続く13ページで、社会的貢献や環境への取り組みなどが報告されています。従来の社会・環境報告書にあたる部分です。最後の7ページが会社案内です。事業の全容やグローバルな展開、主な業績などが簡単に紹介されています。

いずれも限られたページなので、詳細が把握できるわけではありませんが、基本的な事業のあり方や取り組みなど、同社の全体像が非常にわかりやすくまとめられています。昔よくあったイメージ重視で演出過剰な会社案内ではなく、会社の実情を誠実に表した地に足のついた会社案内とみることができます。もっとも、これだけではアカウンタビリティは果たせないので、Web上で詳細情報を公開しています。

 

※なお、最近はCSRレポートとアニュアルレポートを合体させたものも見かけますが、その多くは単純に2つのコンテンツを1冊にしただけなので、新しいスタイルとしては分類しません。

 

②戦略的CSRレポート(具体例:東京ガスグループ、http://www.tokyo-gas.co.jp/csr

本業においてCSRにいかに取り組むかについて、戦略的に解説したものを「戦略的CSRレポート」と分類します。従来のCSRレポートがコンプライアンスを重視した「守りのCSR」を報告するものであるのに対して、戦略的SCRレポートは本業がいかに社会貢献しているのか、あるいは、今後いかに貢献していくのかという「攻めのCSR」をアピールするものです。

東京ガスグループのものは総ページ32ページのうち、半分の16ページが戦略的CSRレポートにあたります。事業プロセスや社員ひとりひとりの業務が社会的責任をどのように担っていくのか。保安や防災という社会的責任や環境への取り組みをいかに商品やサービスに盛り込んでいくのか。そのような戦略を積極的にアピールする内容となっています。一方で、CSRの行動基準やガバナンス、ガイドラインに即した情報開示は最後の6ページで触れられているだけです。

ただし、同社もアカウンタビリティを果たすために、Web上での情報公開を充実させています。2009年からはWeb上での公開をメインとし、それを補うのもとして、パンフレットを発行しています。ページ数も2008年以前のものより半分以下に減らしています。Web上に「本年度版からは、WEBサイトを『CSR報告書』と位置づけ、より分かりやすい報告書を目指しました。」と書かれていることからもWebに移行したことがうかがえます。

 

CSRマニフェスト(具体例:資生堂、http://www.shiseido.co.jp/csr

戦略的CSRレポートはあくまでも「レポート」ですが、レポートにとどまらず、本業におけるCSRの理念や将来ビジョンを「宣言」したタイプを「CSRマニフェスト」と呼ぶことにします。具体例としては、資生堂の「資生堂CSRビジョン」があります。

資生堂のCSRレポートは2008年から原則として、Web上での公開のみとしています。そのうえで、GRIのガイドラインに沿った詳細な報告から、本業においてCSRにどう取り組んでいるかという戦略的なアピールまで、非常に充実した情報公開をおこなっています。同社のCSRウェブサイトのご案内には「(CSR活動の)すべての情報は『資生堂CSRウェブサイト』に開示することとしました。」と書かれています。2007年を最後にパンフレットはその後は発行されていません。

一方で、2008年には、3年後の2010年を見据えた「資生堂CSRビジョン」をパンフレット(16ページのコンパクトな冊子)で発行しています。そこでは「資生堂のすべきこと」として、同社独自の5つの重点テーマを宣言しています。外部のステークホルダー向けであると同時に、社員に対してもビジョンを提示・啓発するのに効果的なツールとなっています。

なお、Webは日々更新されるので、過去の情報をさかのぼって見ることができません。そのため、資生堂CSRウェブサイトでは年に一度、特定の時点でのコンテンツを冊子形式のPDFにまとめ、バックナンバーとして閲覧・ダウンロードできるようにしています。同社の事例は、Web上でアカウンタビリティを果たし、CSRビジョンをパンフレットで発行するというメディアミックスの模範となる事例だと思います。

 

このようにCSRレポートが様変わりしてきた背景には、「戦略的CSR」という新しい概念の登場があります。次回は、この「戦略的CSR」について、みていきたいと思います。できれば、ガイドラインとの関係についても調べてみましょう。

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