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CSR報告書作成の傾向と対策/その1
更新日:2009年10月26日
CSR報告書が様変わりしつつあります。
何が様変わりしているかについては、主に次の3点です。
①環境中心の報告書から環境・社会・経済を対象とする報告書へ
②ガイドラインに沿った報告書から企業ごとの独自性の高い報告書へ
③環境や社会的貢献活動の報告書からより本業に根ざした報告書へ
そこで、このブログでは数回にわたって、様変わりするCSR報告書作成の傾向と対策を紹介していきたいと思います。
今回は3点の様変わりについて簡単に説明しましょう。
ご存じのとおり、CSR報告書の出発点は環境報告書です。1990年代の前半、すでに日本IBMやソニーなどの一部の先駆的企業が環境レポートを出していましたが、本格的に普及し始めるのは1997年に環境庁が「環境報告書作成ガイドライン」を公表してからです。翌1998年には日本企業では先陣を切って富士通が環境会計を実施。他の上場企業も環境報告書を相次いで発表しましたが、その数はまだ200社程度でした。
その後、ガイドラインは何度か更新され、環境報告書を発表する企業が増える中で、環境への取り組みだけでなく、地域やスポーツ・文化などへの社会的貢献活動も取り上げられるようになりました。その頃の報告書には、「社会・環境報告書」とのタイトルが多く見られます。
さらに、2001年~2002年のエンロンやワールドコムの大規模な企業の不正行為が続いたのを節目に、社会的責任に対する企業姿勢を表すCSR報告書へと発展してきました。現在では、環境・社会・経済(これをトリプルボトムラインといいます)を対象とする報告書が一般的です。また、今後はその中でも、社会的課題に関する記載のウェイトが大きくなるものと思われます。
②ガイドラインに沿った報告書から企業ごとの独自性の高い報告書へ
「マテリアリティ(重要性)」という言葉を聞いたことがありますか?
従来の報告書はガイドラインに忠実に沿ったものが主流でした。報告書の客観性を保証したり、企業ごとに内容を比較するにはガイドラインは有効ですが、悪くすればステロタイプに陥り、ガイドラインに沿うことを重視して形式化する恐れもあります。
そこで、2006年にガイドライン自身によって、企業の独自性を尊重する「マテリアリティ(重要性)」という概念が打ち出されました。これは、「重要な経済的、環境的、社会的影響を反映するテーマや指標」や「ステークホルダーの評価および意思決定に実質的な影響を及ぼすであろうテーマや指標」に重きを置くべきだとの指針です。これらのテーマや指標は企業ごとに異なるので、今後、企業ごとに独自性が高まることが期待されています。
③環境や社会的貢献活動の報告書からより本業に根ざした報告書へ
社会的貢献活動が取り上げられはじめた当初は、その内容は寄付やメセナなどの利益の一部を社会に還元する活動、いわば、企業市民活動が中心でした。しかし、これは企業活動の中の一部の活動にすぎず、最近では、全企業活動を通して社会的責任を果たさなければならないとの考え方に変わってきています。
それを端的に表すのが、経済同友会が2008年5月に発表した提言「価値創造型CSRによる社会変革~社会からの信頼と社会的課題に応えるCSRへ~」です。そこでは、「企業を取り巻く社会には様々な課題が山積みしているにもかかわらず、(中略)社会からの要請と期待に対して、感受性を持たず誠実に応えようとしない」との問題提起があり、その上で、「事業活動(本業)を通じたCSR」は「事業活動との関連性を考慮しながら、社会的課題を予見し先取りして先駆的な商品・サービスの開拓などを行い、新たな本業と新たな市場を創造するような価値創造型CSR取り組みによってはじめて実現する」と結論づけています。
環境報告書や社会・環境報告書のタイトルであった頃は、報告書は企業の環境関連部署あるいは広報部署の発行物のひとつでしたが、本業に根ざしたCSR報告書は、新たなスタイルの会社案内(担当部署は広報かもしれませんが)と位置づけられると考えます。
※ガイドラインには、環境省の「環境報告ガイドライン」や国際的なガイドラインであるGRIの「サスティナビリティ・レポーティング・ガイドライン」など、いくつかの種類がありますが、この本文中ではその区別を省略し、「ガイドライン」としています。
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この記事に対するコメント
「CSR報告書作成の傾向と対策」の記事、興味深く拝読させていただきました。一昨年でしたでしょうか、資生堂様が独自の「CSR報告書」を作成されたことが大変話題になりました。それをきっかけに日本企業のガイドライン離れ、独自路線が始まったように思います。
一方、ほんの数年前はPR、IR、ERは対象が違うだけで、コミュニケーションレベルは同じという風潮でした。この1年、2年でCSRとIR(財務情報と言うべきかももしれません)は切り離せないものとなりつつあります。特に欧州の動きが活発で現在開催されているCOP15では地球温暖化が事業にもたらすリスクを企業は開示すべきという指針が出るものと思われます。それを受けて各国では財務情報に環境情報を盛り込む制度も検討されるとか。
この状況で「このガイドライン」とは言い難いものがありますが、おそらく何かのガイドラインを参考に開示していくこととなるのではないでしょうか。今後、環境、社会、ガバナンスに関する情報の開示事項は増えはしても減りはしないとも思えます。
もしそうであるならば、やはりガイドラインは軽視しづらいものがあります。CSR報告書は「CSR報告書」、財務情報としての開示はそれ、とするような2つの顔を持つのも、企業として疑問を感じる次第です。ガイドラインもどれがよいと言うのではなく、どれにでも対応できるというものが必要なのだと考えています。
正直申しまして、「CSR報告書」を担当する立場としまして、「アニュアルレポート」の知識、環境の知識、経営側の認知、そしてグローバルでの動きと担当者レベルでは限界を感じる毎日でございます。会社の立地が東京でないことなどが情報収集の困難さをより一層大きくしています。
そのあたりのお話なども含めていただけますと幸いに存じます。日々の悩みから開放いただきたく、コメントした次第にございます。
匿名希望さま
実践的な立場からのコメント、たいへんありがとうございます。悩ましい課題ですね。
私は個人的には、CSR活動が本業に根差すようになれば、さまざまな会社情報はCSR報告書に収れんされることが望ましいと思っています。それはしかし、あくまでも机上の論であって、現実的には難しいとも思います。仮に、CSR報告書への情報の収れんが進んだとしても、財務情報発信の媒体は今後も一般的には別建てになるでしょう。
これからしばらくは、どのようなガイドラインに基づき、どのような媒体を発行していくかは企業ごとの判断に任され、自然淘汰の中でより適正なものが残ってくことになるのではないでしょうか。
ブログの次の記事で考えさせていただきます。