現場対談

ナナ総研の所長と社内報担当者との現場対談。「熱い想い」を聞き出し、事例を通じて社内報の本質に切り込むインタビュー。

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「この会社が好き、この仕事が好き」と思えるか

更新日:2010年5月26日

取材をすればするほど会社が好きになる

 

豊田 いろいろ取材を積み重ねるうち、「こんなすごい人がいるんだ!」とか、「結構いいじゃん、ウチの会社って」などと思うようになってきたのですか?

 

山村 毎回思いますよ。「何て素晴らしい人ばかりなんだろう」と。社内報の担当者は、取材をすればするほど、自分の会社が好きになるんじゃないでしょうか。

取材相手も忙しい中、取材を受ける時間を割いて、一生懸命話してくれるのです。原稿チェックのお願いがてら、取材のお礼を書いたら「こちらこそありがとう」という返事をもらったりするのです。

 

豊田 でも、いい社内報を作ろうと思ったら、手間と時間がかかりますよね。

 

山村 はい、絶対にかかりますね。別のことをやりたくても、出来ないくらい(笑)。

 

豊田 そうですね。手間をかけずに作った社内報が読まれるかというと、それはありえない。読者が読みたいものには仕上がらないと思います。

 当社で定期的に社内広報サロンを開催していて思うのは、情報を「待つ」姿勢から「取りに行く」姿勢に変換するのは、結構難しいのだということです。自分から「取りに行く」人とそうでない人は、明確に分かれます。多くの人が「待ち」です。すると、原稿が来ない、取材を依頼しても返事がない、協力してくれない。基本的に「待ち」の人ほど、うまく行っていないようです。ベテランの方や、楽しんで仕事をしている方が、「それは違うよ、自分で行かなきゃダメ」と助言してくれたりします。

 

山村 そうですね、一度行って顔を合わせて、いつでも連絡を取れる関係になっておけば、その後しばらく会わなくても、情報をくれたりしますものね。

 

豊田 それを面倒くさがる編集者も少なくありません。しかし、聞く人は徹底的に聞きまくる。ワコールの担当者さんは、取材が終わったら、ついでに社内報をどう思うか、じっくりヒアリングするそうです。

 

社内報を読みふけって仕事にならない職場が!

 

山村 豊田さんが知るパワフルな社内報編集者の方にはどのような方がいますか?

 

豊田 百十四銀行の香西さんでしょうか。当初は、会社が社内報にあまり理解を示してくれなかったそうです。そこで、仕事として出張できないから、プライベートで旅行をして、遊びがてら記事にしていたそうです。昨年のコンペでゴールド企画賞を受賞した「金融教育を考えよう!」という企画も、りそな銀行さんに取材に行ったそうです。すごくパワフルですよね。「ある支店では、就業時間中に社内報を配らない」と話しておられました。配ると皆が読んでしまうので、「仕事にならない!」と支店長が怒って。ですから、終業の間際に配るそうです。

 

山村 ええーっ! それ、すごい!

 

豊田 相当勉強されていますよ、香西さんは。雑誌を毎月100冊くらい見るそうです。すると、企画とデザインが同時に浮かぶようになったそうです。

 

山村 その原動力は何なんでしょうね?

 

豊田 「やっぱり会社が好きだから」と言っておられました。香西さんも、転職を考えた時期もあったそうです。でも、転職して全く知らない人を取材する道を取るのか、好きな会社の社員を取材して誌面にするのか、どちらを取るか。そこで、「やっぱり会社が好きだ」と思って残ったそうです。香西さんの原動力は、「会社が好き、社員が好き」ということに尽きるのでしょう。そして、同じ思いを持つ編集者は、大勢おられるのではないでしょうか。

 

編集技術よりも編集マインド

 

豊田 編集技術や取材の仕方などは、ハウツー本があります。しかし「なぜ、この仕事は楽しいの?」とか「そもそも、何のためにやっているの?」というところが一番の大元じゃないですか。そこからすべてが始まります。でも、それぞれの編集者のそんな熱いマインドを紹介した書物は、あまりない。そこでそれを伝えるのが、この「所長対談」の目的なのです。

 

山村 開発の社員は「お客様に喜ばれる商品を作りたい」とか、営業社員なら「お客様に一番いい提案を自分がしてみせる」といったように、比較的分かりやすいですよね。でも社内報は、目的や評価が分かりにくいのかもしれません。本人の意思がないまま任命されることが多いからでしょうか?

 

豊田 やはり、「物ありき」なんでしょうね。「物ありき」というのは、発行物という物理的な「物」ということです。「とりあえず、発行できればOK」というのが、多くの編集者の実情だと思うのです。ですから、「どう発行し続けるか、どう埋めるか、どう見せるか」というレベルで止まってしまう。したがって、「なぜ社内報を発行しているのか?」という編集者個人のマインドの部分に関しては、あまり話が及ばない。

これを「人ありき」に変えたいのです。サロンでも、8割の人が知りたいのは「どう企画を立てればいい?」「どんなデザインがいい?」という編集上の問題であって、「どういう人が、どういう思いで作っているのか」というところまで、まだ視線が行かないのです。「物」さえ出来ればいいのではなく、大事なのはそこじゃないかと思うのです。

 

山村 なるほど。

 

良いものを作るには手間がかかる

 

豊田 セミナーでよく話すのは、「良いものを作るとしたら、絶対に手間がかかる」ということです。その上で、「どうせやるなら楽しくやろうよ」と。楽しみながら社内報編集の仕事をしている人の話をたくさん聞き、そうではない人にいかに伝えるか。しかし残念ながら、皆が皆そうではありません。ですから、仕事が苦痛だと感じたり、編集技術のレベル論でとどまったりするのです。

 

山村 全員がそれを理解すれば、そうなるのでしょうか?

 

豊田 ええ、ただ個々の事情がありますからね。他の仕事と兼務していたり。

 

山村 取材に行きたくても出張できない、とか。

 

豊田 そうなんですよ。ですから「それは分かるけど、実際にはムリだよ」と。でも、今は出来なくても「こういう世界もあるんだよ」ということを知っておかないと、出来る段階になったとき、それに気づきませんからね。また、待っていても、情報は来ませんし、常に問題意識を持っていないといけません。そんなことを編集者の皆さんにお伝えし、少しでも目覚めてもらえれば、と思っています。

 

山村 そうですね。そう聞くと、「ウチは恵まれているな」と、気づきました(笑)。

 

豊田 恵まれておられますよ。その環境をフルに生かしてください。たとえ環境がそろっていたとしても、いかに動くかは本人次第です。最後は、やはり「この会社が好き、この仕事が好き」と思えるかどうかにかかっているのではないでしょうか。

 

山村 いいお話を、ありがとうございます。勉強になりました。ますます頑張ろうと思います。

 

豊田 長時間ありがとうございました。

                                   (終わり)

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